(三)

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 地下鉄の日本橋駅のホームに来て、私は壁に寄りかかっていた。気分が悪く、吐き気も催し始めていたのだ。そんなときに竹西君がそう声をかけてきた。さっきまでそんなことに全く気づかずにぺらぺらとおしゃべりしていたのに。  確かに色々考えていたら気分が悪くなってきていた。フラッシュバックはまだ頭の中で再生と消滅を延々とリピートしていた。  そして私はついにその場でしゃがみこんだ。立っているのも辛かった。  竹西君は「大丈夫ですか」と、乏しい語彙力のフレーズを繰り返しかけてくれた。しかし、その六文字だけで気分の悪さが晴れたことは、今までの人生の中で一度もなかったし、それは今回も例外ではなかった。 (続く)
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