(四)

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 そう言うと彼は、ベッドの上に四つん這いになって、私の方へ顔を近づけてきた。少しずつゆっくりと。唇をタコみたいにすぼめつつ突き出すようにしながらだ。  好き。そんな感情、最近はあまりなかった。三十路のバツイチ女にはもう仕事しか残されていないような気もしていた。だから、そんなことを言われてもすぐにはピンとは来なかった。  しかし、そのタコみたいな武西君の唇が、ゆっくりと私の顔に近づいてくるのをジッと見つめていたら、少しずつ心拍数が上がってきた。目をつむったまま、私の唇にまっすぐ自分の唇を押し付けようとしてきている。彼は本気なのだろうか。私は五歳も年上なのに。 (続く)
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