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大樹はちょうど口に含んだグラスのビールを盛大に吹き出した。
「ちょっと待て! なんでお前がそれを知っているんだよ」
大樹は大声で反応した。ビンゴだ。
「みんな知ってるわよ。それを知らないのはあんただけよ」
「いつから?」
「そりゃ、卒業式の日に決まっているでしょう。階段の影から見てたの、気づかなかった?」
私に言われて、大樹の口はジョッキに半分ほど残っていた小麦色の液体を全て吸引することで失った言葉を補填した。そして喉仏をポンプのように動かして口の中のアルコール入り炭酸飲料を食道の方へと送り込み終えると「勘弁してくれ」と口にした。
(続く)
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