花の惑星

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 色鮮やかな花が咲き乱れる星がある。  アンナには最初、ジェフの言うことが信じられなかった。  だが夫は地球では著名な天文学者だ。難しい話はアンナにはよくわからないが、ジェフが言うには宇宙船は当初の軌道に沿ってその星へ向かっており、アンナと彼の子が生まれる頃には着くそうだ。  その惑星は地球と非常に似た環境であり、生物が地球と同じ進化をたどっていたなら、あるいは人間に近い生物もいるかもしれないとジェフは言う。少なくとも、自分たちが暮らしていくには充分な環境らしい。  もし、その星に生物がいなかったとしても、アンナはかまわなかった。それよりこの狭苦しい宇宙船からできるだけ早く外へ出たいと思った。  一階には広いリビングと寝室に大切な貯蔵庫。冷たい鉄パイプで出来た簡素な階段を上がった二階は操縦室だけだ。  宇宙船とはそういうものなのか、どこにも窓がない。したがってせっかくの宇宙空間を彼女は見たことがなかった。換気システムは正常に作動しており、酸素も充分行き届いているはずだが、アンナはなんとなく息苦しさを感じることがある。  そしてジェフはなぜかアンナを操縦室にけっして入れようとしなかった。彼女に操縦のことはわからないし、余計なところを触って軌道を外れたら大変だからと。
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