1人が本棚に入れています
本棚に追加
誰なんだよ!
(なんだあいつ、もしかして…俺を見てるのか?)
彼は左右に首を振り辺りを見回すも、その男の視線の先と思えるのは自分だけである。
(まじ、俺なのか? あんな奴知らないぞ)
その男のニヤケたまま固まって見える笑顔が、彼への不快さを倍増させる。しかも若干いい男風なのが癪に障る。
(なんだ?向かって来てるぞ、ホントに来るのか、おい!)
その男は、嬉しそうに彼の元に進んで来ている。
(やっぱ俺か?俺か?俺っぽいな)
近づくにつれ、その男の嬉しそうな表情が不気味にさえ見えて来る。
(逃げるか?いや、文句を言われる雰囲気ではなさそうだ。こんな街の中で追いかけっこになっても恥ずかし過ぎる。どうする…か)
と、迷っている内に、その男は彼の前までやって来てしまう。
(まあ、やっぱ俺だよな。何の用なんだよこいつ)
そう思っていると、その男が口を開いた。
「いや~、久ぶりでーす!」
話し出すと妙な笑顔で固まっていた表情が一気に崩れ、男はフレンドリーに迫って来る。その雰囲気に無碍に扱うことも出来ず、自然と対応を迫られてしまう破目に。
「ええっ、ああ…」
(だ、誰だよ?久しぶりって。お前なんか知らないって)
「元気にしてましたか?」
「ま、まあ」
一応、曖昧に応えて様子を窺うが、やっぱり記憶に無い。
(俺の知り合いってことなのか?人違いじゃないのか?)
「いや~こんなところで会えるなんて…」
(いや、絶対に人違いだろ。それにしても何だろうこいつ、自信満々に人違いするか普通。思い込みの激しい奴だなぁ、全く)
最初のコメントを投稿しよう!