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「…いやいや、そこまではないですけど、表彰台は狙えたかもとは思ってますけど」
(結構細かいところまで見てるな。ってことは、この人も陸上をやってたってことなのか?結構いい体してるし)
年令は同じくらいなので、自分と同じ大学の選手でない事ぐらいはいくら何でも間違いない。かと言って、当時の他の大学のめぼしい選手も思い浮かべてみるが、その中にも該当者と思しき人は居なさそうである。
(おまえ、誰なんだよ)
翔は思い出せない自分にだんだん気持ち悪くなって来る。
「大学を卒業したら走るのを止めるって聞いた時は驚きましたよ。やっぱ高校3年の時の怪我の影響なんですか?」
「いやいや、続けるほどの選手では無かったってことですよ。実業団でもやれる短距離選手は一握りだし」
(おいおい、ちょっと俺のこと知り過ぎじゃないのか?怪我なんて練習の最中での出来事だし。そこまで知ってるってことは、やっぱある程度陸上に関係した奴ではあるんだよな)
陸上繋がりで得た情報だろうと確信を持った翔は、逆に聞いてみることにした。
「今は、走ってないんですか?」
「僕ですか?僕は足、速くないですし。今さら始めようとは思いませんよ」
(あれっ?ってことは陸上はやってないのか。ってことは、同じ大学で単に陸上に興味がある誰かってことなのか?)
そう思い、
「うちの大学の今川は、今でも実業団で走ってますよ」
自分の大学で今でも競技を続けている一番有名な人物の名前を出してみる。
「今川さんって?え~と…」
「駅伝で活躍した今川ですよ。大学では有名だったじゃないですか」
「ああ、僕は短距離しか興味が無かったんで、明鏡大学さんの長距離まではちょっと分かんないんですよ」
「ああ、そうなんだ。興味が無いんじゃ分かんないですよね…」
(ってことは、俺と同じ明鏡大学生では無いってことだ…じゃあ、何処のどいつなんだよこいつ)
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