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一人誰当てゲーム
「翔さんが高校2年の時のあのインターハイの県大会。あの1600メートルリレーのごぼう抜きは凄かったですよね」
「ああ、あれね。ゴール前で転ばなきゃ凄かったんだけどね」
(高校の時の事も知ってるのか。もしかして、こいつ昔はぽっちゃりで激やせしたとか?それで俺が分からないってことはないよな?)
翔は、高校時代のぽっちゃり系の知人を思い浮かべてみる。が、そもそも痩せて誰か分からなくなるくらいのぽっちゃりさんは記憶に無い。
そこで翔は彼の言葉遣いから後輩説を唱え始める。
「ちょうど、そのインターハイの頃にアイドルになって転校して行った1年の子がいたよね」
翔が高校2年の時に一年下で、誰でも知ってそうな話題と言えばこの話くらいである。
「へ~そうなんですか、何て子ですか?」
(同じ高校で、同じ学年だったら知らない訳ないよな。ってことは同じ高校ではないってことだ…)
「名前までは僕もしらないんだけどさ。同じ学年ならわかるかと思ったんだんけど」
ここで翔は、思い切って年令当ての勝負に出てみる。これが外れてしまうと、自分が彼を誤認していることになるが、それもしょうがないだろう。翔はそう判断した。
「いや、流石に興味が無ければ分からないですよ」
(おお、肯定した。と言うことは一つ下ってことだ。学校が違うなら、もう分かんねえから何処の学校か聞いてみるか…)
ここまで来れば翔にとっては、いかに名前のみを聞かずに”何処の誰なのかを思い出す”その一点のみの安易な”一人誰当てゲーム”に変更。
ここまで妥協したのだから、絶対に思い出してやろうと意地になる。
「あれ、何処の高校でしたっけ?」
「ご存じなかったですか?東の宮西高ですけど」
「東の西?」
(東にあるのか西なのか分かんない高校だな)
と思い、翔が首を傾げると、
「妹さんの高校の近くにあるんですけど。ここからだと東方向ですかね」
その男は翔が首を傾げているのを見て、現在地から見た高校の所在地がどの辺りなのか分からないのだと誤認し、翔の妹の情報を出して来る。
(俺の妹のこと知ってるのか?ってことは、どう言うことだ?ますます分かんねぇ)
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