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翔は、これまでに知った情報を頭の中で整理してみる。
(え~と、俺の陸上経歴に詳しく、高校3年生の時の怪我まで知っている。そして、こいつは陸上部ではなくて、同じ大学でも同じ高校でもない。妹と同じ一つ下の学年で、妹の高校まで知っている。
さあ、彼は誰でしょう? ん…っ、さっぱり分からん)
ここまで分からないと具体的な質問を重ねて行くしかないと判断。翔は不自然な会話の流れと承知の上で更に妥協の上その男の細かい情報を聞き始める。
まずは、住まいが近所であるかを知るために、最寄りの駅を聞いてみる。しかし、自分の家とは車で30分以上は離れている。
次に思い切って小中学校が何処か?を聞いてみた。だが、その当時も自分の家の近くには住んでいなかったようである。
更に一応、幼少期まで遡り接点が無いかも確認をしてみた。しかし、翔との接点は全く見つからない。
(駄目だな分かんねぇよ、時間の無駄だ。こいつ一体誰なんだよ?)
ここまで来たら失礼でも何でも直接聞くしかない。翔は”一人誰当てゲーム”の完全敗北を認めることにする。
「ごめん、顔は覚えているんだけど名前を忘れてしまって思い出せないんだけど、名前何だっけ。申し訳ない」
ホントは顔も覚えていないのだけれど、一応多少の体裁は繕ってみる。
しかし当然、
「ええー、名前忘れちゃってたんですか?ホントですか?ショックだなぁ」
まあ、そう言うことになる。
「ごめん、ホントごめん。ここまで出てるんだけど」
喉に手を当て誤魔化す翔。
「田辺です、田辺弘道ですよ」
「ああ、田辺君ね。そうそう」
と思い出した振りで納得して見せるが、
(誰だよ、分かんねえよ)
それでも何者か分からない翔。
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