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そのショッピングモールから出たのは何人だったろうか。入った数よりも少ないのは明白だった。だが、誰も覚えていないのだ。
誰がいたのか。何があったのか。誰がいなくなったのか。
扉は彼らの全てを奪っていった。
扉を潜れば彼らは忘れるだろう。それは彼らにとって良いことなのだろうか。それとも、悪いことなのだろうか。
扉の中に残された人は何を思うだろう。忘れ去られた悪夢のような世界の中で、彼らは逃げ惑い続けるのだ。
たった一つ、選択を誤っただけなのに。
ああ、また誰かがいなくなったようだ。
始めから存在さえしていなかったとでもいうように、その扉は消えていった。
異質な部屋達を抱えたまま、それは世界の何処かを漂い続けるのである。
その招待状は予言である。予めこうなるのだと宣言している。だから、避けることもできたはずなのだ。
しかしゲストとなった彼らはやって来た。何かが起こるという期待もあったのだろう。それでも彼らは招待状を消えていった。
異質な部屋達を抱えたまま、それは世界の何処かを漂い続けるのである。
その招待状は予言である。予めこうなるのだと宣言している。だから、避けることもできたはずなのだ。
しかしゲストとなった彼らはやって来た。何かが起こるという期待もあったのだろう。それでも彼らは招待状を手にしたのだ。
その瞬間、予言は確定した未来となった。彼らは何かが起こる場へと自分から飛び込んでいったのである。
それもまた、予言されたことであろう。
扉は開いた。大きく口を開け、ゲストを呑み込んでいった。
そして静かに、口を閉じていった。
あのショッピングモールはあんなに大きくなかったはずだ。
あのショッピングモールには空き店舗などない。
あのショッピングモールにはそんな通路はない。
何かがおかしい。
何かがおかしい。
何かがおかしいはずなのにおかしいと感じない。
どこからないはずのものがあるように姿を変えたのだろう。
誰も覚えてはいない。
どうせこの世界はくだらないものなのだ。だからそこから誰かがいなくなってもいいだろう。何かおかしなものが増えてもいいだろう。
どうせ誰も見ていない。誰も気にしない。その変化に、誰も気づかないのだ。なんてくだらない世界だろう。
ああ、また誰かがいなくなったようだ。
世界から、誰かが消えたようだ。
今度はあなたの番だ。
今、これを見ているあなたの番だ。
だって、見ていたのだろう?
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