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彼らの中の誰かがアラームを設定していたのだろうか。招待状に記されたパーティーの始まる時間になると、場に合わない音楽が鳴り出した。
そして、一枚の扉から鍵が解錠される音がしたのである。
パーティー会場となるだろうその部屋は、やけに小綺麗な、別の言い方で異様に清潔な部屋だった。
壁や照明に凝っているわけではない。簡素なのか質素なのかわからない、シンプルな部屋である。
出入り口は一ヶ所、ゲストたちが入室したあの扉だけである。窓はない。換気扇や空気穴はあるのだろうか。どこか息苦しい気がする。
そんなはずはないだろう。だって其所は「パーティー」の会場なのだから。
用意されていたのはいくつかのテーブルとゲストが全員座れる数のイス。テーブルの上には山ほどのお菓子とパン、おにぎり、ペットボトルの飲み物が用意されていた。それこそパーティーができそうな品揃えではあったが、全て近場のコンビニで手に入れることのできる物ばかりだった。
そして、一番奥にはまるで王様が座るかのように豪華な装飾がされたイスが鎮座している。その上では一人の人形が座っているではないか。
それを見たゲストは、あの人形は特別だと感じた。感じたが、人形はただの人形であった。
彼らは次々とゲストになっていった。扉を潜り、正式にパーティーの参加者として席についた。
そして、最後の一人が入室した瞬間にそれは起こった。扉に鍵がかけられたのである。
やけに大きな施錠音が部屋全体に響き渡った。それこそが「パーティー」の開始の合図であるかのように。
「ありえねえ」「うそでしょ」「マジかよ」
ゲストたちは驚きの声をあげて、自分達が潜った扉へ近づいた。
扉は引いても押しても全く動かない。ゲストの顔には焦りと憤りが見え始めた。
「ゲームとかじゃないのかよ」「ふざけてる」
ゲストの動きはだんだんと荒くなっていく。扉を叩き、蹴り、イスを投げつける者まで出てきた時だった。
「何か、出る方法があるんじゃないか」「これって脱出ゲームみたいだ」「こんなに食べ物だってあるんだ。もっと時間をかけて考えよう」
「落ち着け」「冷静に」「きっと出られる」
開かない扉の前でゲストたちは希望を見失わなかった。それは彼らが選ばれた「ゲスト」であったからなのか。それとも単純に部屋に閉じ込められた人が複数だったからなのか。
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