2.面接

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2.面接

 「主任、面接の方いらっしゃってますよ」  「あぁ、そうだったね」  オルソック株式会社。中堅どころの警備会社である。小池章宏は、100キロ近い巨体をよっこらせと起こすと、応接室へと向かった。  中に入ると、ひょろっとした印象の高齢の男が一人かしこまっていた。  「主任の小池です。どうぞおかけください」  小池は名刺を渡すと、着席を促した。テーブルの上には、湯呑が二つ用意されていたが、相手の湯呑はすでに空になっていた。 履歴書を拝見、と手に取ってざっと目を通す。 「村野一樹さんね。ほぉ、前職はサニーさんですか。3Dホログラムの研究開発をね。超大手じゃないですか。今回の我が社の募集は警備員なのですが、失礼ながら年齢的なこともありますし、本当に大丈夫ですか?」  村野一樹は緊張した面持ちで、一度背筋をぴんと伸ばすと、湯呑に手を伸ばしたが、すでに飲み干してしまった事に気が付いた。そこでごくっと唾をのみ込んで、語り始めた。  「これまでは会社と家族のために生きてきましたが、残りの人生は世の中の人々のお役に立ちたいと思っていたところ、御社の募集を見つけまして、今回応募させていただきました。何卒宜しくお願い致します」  小池は、一瞬考える素振りを見せた。 「困った人々のためにというお気持ちはご立派だと思いますが、我が社はただの警備会社ですよ? 村野さんの目的とはたして合致するのでしょうか?」 「り、履歴書をもう一度よくご確認ください。私が御社を希望する理由がお分かりいただけるかと」  そう言われて、小池は改めて履歴書に目を落とす。ご丁寧に学歴は小学校から書かれており、思わずクスッと笑ってしまった。高校は全国でも有名な進学校で、その後、日本では一流と言われる国立大学の理工学部を卒業。その後、2年間海外協力隊に参加している。なるほど、若い頃から志が高かったのだな、と感心した次の瞬間である。職歴欄の思わぬ文字が目に飛び込んできた。  ウルトラマン  その4年後にサニーに入社となっている。ウルトラマンというのは、彼なりのジョークのつもりだろうかと思ったが、どうにも気になってしまった。
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