10年振りの君へ

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学校を休んで一週間。 今日は土曜日、学校は休みだ 「...そろそろ学校に行かないと」 けど時間割が分からないな 誰かに電話して聞いてみるか...? 俺が携帯で同級生の友達に電話をしようとした時だ 外から声が聞こえた 「おーい高倉―」 あいつだ なんでだ?なんであいつが家の前に居るんだ? 茶化しに来たのか? 「居るんだろー、居るなら顔ぐらい出せよー」 うるさい、近所迷惑だろ... 人の気持ちもわからない...は違うか とりあえずこれ以上騒がれたら苦情が来る、辞めさせないと 「うるさい...なんの用だよ」 「おっ、やっと出てきた!これ、月曜の時間割!」 「あ、ありがとう...てか何でお前来たの?休んでる間誰も来なかったのに」 そうだ、俺が学校を休んでる間、誰も時間割など教えに来なかった それなのになんでこいつだけ... 「あーいやさ、大事な話の時お前だけ休んでたからさ?一応報告しに来た」 「大事な話...?」 一体なんだ? あれか?実は引っ越すことになったと 「実は俺さ、引っ越すことになったんだ」 ...は? 「は...?え、いや...何処に?」 「兵庫の方、明後日出発なんだよね」 いや、なんだこれ 吐きそうだ 何も出ない筈なのに、何かを吐き出そうとしてる 「そっ、か...何時頃なの、行くの」 「確か昼の13時ごろだっけな、何?最後見送ってくれんの?」 「...うん」 言いたい 今ここで、隠してる気持ちを全部吐き出して 盛大に振られて楽になってしまおうか。 そしたらこの吐き気も収まるのか? けど体が、喉が言葉を吐き出させてくれない 好きだ この一言さえ吐き出させてくれず 「元気でね」 この一言であいつとその日は解散した 夜 俺は自分の部屋で、声を殺して泣いた。 なんであの時好きと言えなかったのか なんで引き留めてまで一緒に居なかったのか なんであの時、元気でね、の一言で終わらせてしまったのか あいつの声、笑顔、大きな手、大きな背中、優しい声 全てが好きだった けどもう、明後日には諦めてしまうしかないのか。 そうだ、いっそのこともう 勝手に好きになって、勝手に失恋をした男になろう。 「...あーあ、俺マジで惨めじゃん」
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