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11月25日
あいつの引っ越し日当日
俺はラフな格好をし、家に向かった
片手には花束という言葉を使うのも申し訳ないが
薔薇を三本、優しく握り小走りで家に向かう
「...諦めるんじゃなかったのかよ、俺」
「おっ、高倉じゃん!来てくれたんだ!」
「...もう荷物は積んだの?」
「おうっ、後は親父の車が来るの待ってる感じ」
今日でお別れ...なんだよな
これが最後の会話、になるんだよな
胸が痛い
あんなに忘れようとしたのに
勝手に失恋をした、惨めな男になったつもりだったのに
こいつを目の前にすると、心が揺らめく
「あ、のさ...」
「ん?どうした?」
...惨めったらしく、最後ぐらい
「これ...最後のプレゼント」
「うおっ、何...薔薇?なんで薔薇だよ」
「良いだろ別に・・たまにで良いから、その薔薇見て...」
「お、おう..?分かった、まぁありがとな!そろそろ親父着くみたいだから、行くよ」
これで本当に最後だ
最後ぐらい、笑って見送ろう
笑って
「またっ...会える...っ..よな?」
「何泣いてんだよぉ、いつかこっちに帰ってきたときは顔出すから!」
気づけばまた、俺は泣いていた
そんな俺をなだめるように、頭を撫でてきた
それが嬉しくて、けどそれと同時に
もうこの手に触れられないと思うと、溢れる涙が止まらなかった。
「高倉、薔薇ありがとうな!もう親父来てるから行くわ!元気でな!」
「う..っ、うん...お前も、元気でな...!」
溢れる涙を必死に拭いながら、最後は笑顔を作り
初めて好きになった人を見送った
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