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その戸惑いを隠そうとすべくか、里香子は事前に購入を指定された教材に目を通し始める。
相変わらず話し声が聞こえる。ものの数分であるが、里香子にとってはかなり長い時間喋っているように聞こえた。
"いい加減、授業始まらないかな・・・"
そう思った途端に里香子の横に人影が立った。先程までの声の主だ。
「ねぇ、私、番号E-0236なの。隣いいかな?」
「え・・・あ、はい。どうぞ・・・」
ガガガガガ、
里香子は自分の番号が0235である事を確認し、椅子を前に動かした。背中側が通り道になる様に空間を作ったのだ。
0236。里香子の番号の左側の横隣の席がそれだ。
"まさか私の隣だなんて。こういう人間と上手くやれる自信がないな・・・"
妙な不安に駆られた。
「やっぱりここだ。・・・ねぇ、あなた名前は?私は水沢亜美菜。宜しくね!」
「私は、錦里香子・・・よ、宜しくお願いします・・・」
彼女の圧にやられたのか、里香子はたかだか名前を名乗るだけなのに、異常なほどにぎこちなく返してしまった。
「もう、硬い硬い!半期だけとはいえ同じクラスなんだし、もっと柔らかくいこうよ。ね!」
「あ、うん・・・宜しくね。」
「おっ!よかった、随分マシになった。」
精一杯の笑顔を返した里香子に、亜美菜も笑顔で返した。
「初対面でこんなこと言うのも変だけどさ、『リカちゃん』笑った方が断然かわいいわよ。」
「え?リカちゃん?ありがと。えーっと・・・」
「亜美菜。アミでも亜美菜でもなんでもいいよ。宜しく!」
これが、後に10数年来の友人となる亜美菜との出会いだった。
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