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思わず身じろぎをした私に王太子閣下は満足した様子だ。そしてうっとりと私の姿を見つめてささやいた。
「そのドレスで構いませんが、ヴェールでもっと覆うようにはできないでしょうか」
「できると思いますわ」
「ありがとう、キャロライン」
王太子閣下は私に1歩近づいた。途端にうわっ…と小さく叫んでたじろいだ様子になり、私の姿から目を背けた。
「なんでございましょう?」
「その…上からあなたの胸元を直視してしまい…ああ、私は先ほどから何を言っているのでしょう?これではあなたに嫌われますね!」
「いえ、そんなことをおっしゃってくださる方は王太子閣下が初めてですので、私はその…光栄でございます」
私は最後は消えいるような声で王太子閣下にささやいた。
――恥ずかしいわっ…見てくださいと言っているようなものじゃないのっ…キャロライン
「もっと近づいても大丈夫ですか?その、本番で卒倒してしまわないよう、慣れておきたいと言いますか、目に焼き付けておきたいと言いますか…………ああ、私は何を言っているんだろう?」
「はい」
私はグッと王太子閣下に近づいた。王太子閣下を見上げる。
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