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アーニャは綺麗な子だった。今も綺麗だ。いつも綺麗にしている。素敵な体つきをしている。私は親友のアーニャが自慢だった。彼女ほど素敵な友達はいないとずっと思っていた。
私がおめでた過ぎるのかしら?私には見えていない何かがずっとあったのだ。でも、あんなにうまく二人で私を騙せるもののかしら?
私があんまり気づかないものだから、ついにアーニャは癇癪を起こして、私に事の事態を把握させようとしたらしい。
彼女は夫が欲しいのだ。きっと私から奪いたいのだ。私はこんな夫もこんな親友も要らない。ただ、身体が思うように動かない。頭が痛い。倒れてしまいそう。吐き気がするような気がする。
私はよろよろとその部屋を出た。必死に這うような思いで、そこを出た。なんとかあの二人から遠ざからなければ。
建物から出た。馬車の往来が激しい。
「奥様、お顔が真っ青ですっ!」
馬車のところで待っていてくれたマリアが叫んだ。
マリア…………。
私は吐き気をどうも抑えきれない。頭が割れそうに痛い。よろよろとマリアの方に向かって歩こうとした。
しかし、私はそのままぬかるみに倒れた。
「きゃあっ!奥様っ!」
マリアの悲鳴と、周りの人々の悲鳴が聞こえた。
馬のいななきと、「止まれーっ!」と叫ぶ音がした。轟音が私の耳に迫る。
私は何かとてつもなく重いもので轢かれた。
そのまま気を失った。
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