仕立て屋での逢瀬

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 ――いやっダメよ、上目遣いになってしまっているじゃないっ、まるで誘っているみたいじゃないっ!    焦って後ろに下がろうとした私は長いドレスの裾を踏んでしまった。そしてよろけて倒れかけた。 「キャっ!」 「おっとっ!」  そのまま王太子閣下に抱き抱えられて熱烈なキスをされた。王太子閣下の腕が私の腰をしっかりと包み、私は今まで以上に王太子閣下に接近したようで、私の胸の高鳴りが王太子閣下に聞こえてしまいそうだ。  ああっん 「こほんっ!」  わざとらしい咳払いがして、私と王太子閣下はハッとして口付けをやめた。二人で部屋の入り口を見ると、私の母が真っ赤な顔をして居心地悪そうに立っていた。 「若いそこのお二人。それ以上は挙式までは我慢ですよ」 「失礼しました。お義母(かあ)様。このドレスで決まりでお願いします。十分にシミュレーションはできました。当日はヴェールでもっと覆っていただければ私としては良いと思いますっ!」   「まあ、ドレスを決めていただきありがとうございますわ、王太子閣下」 「そっ…それではお義母(かあ)様、あとはよろしくお願いしますっ!」 「はい、お任せを。王太子閣下」  王太子閣下は真っ赤になって私の母に挨拶をすると、逃げるように部屋から出て行った。
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