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隆弥がリモコンを押すと、寝室の明かりがフッと消えた。急に暗くなった部屋の片隅でデスクライトの蛍光管だけがわずかな蓄光を放っている。
シャナは観念して瞼を閉じた。
と同時に暴力的なまでの眠気が襲ってくる。
これでいい、この波に乗りたい。乗せて助けて、お願い……。
きゅ、と指に力を込める。すると繋いだ隆弥の指にもきゅっと力が込められた。
温かい……。
今まで出会ったどの肌よりも、触れ合う熱が心地良い。
手を握る。ただそれだけの行為なのに、抱かれるよりも温かいなんて。
何故だろう?
思いを巡らせかけたとき、シャナはもう青空の下にいた。
目前には遊園地が広がっていた。
そう、誕生日だ。シャナの7歳の誕生日に行った、憧れの遊園地。休みは取れないと言っていたのに、父は結局来てくれた。
シャナはメリーゴーランドに乗りたいと言った。
──いいよ、乗っといで。
──ひとりは嫌だよ、一緒に乗って。
せがめば、恥ずかしそうに付き合ってくれる父。
「……パ、……パ……」
無自覚の言葉が口をつく。握り返した隆弥の指が、ピクリと動いた。
父がほがらかに笑っている。だからシャナも嬉しかった。
青空の下で木馬は廻る。ゆらゆらゆらゆら、いつまでも──。
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