暴かれた夜

2/5
前へ
/52ページ
次へ
狐につままれたような気持ちになる。 ダイニングテーブルには料理が置かれていた。 ラップのかかったパスタとサラダ。 もしやと思って見つめていると、ああ、と隆弥が振り返った。 「起きたらいつでも食べられるように用意してたけど、せっかくだから一緒にあったかいの食べよう。もう少しでできるから……よ、っと」 慣れた手つきでフライパンのガラス蓋を取り外す。中から現れたのは肉厚のハンバーグだった。大きなものが4つも詰まっている。 「いやでも……」 「遠慮しないで。お腹すいたでしょ?」 お腹、すいたでしょ……。 問われると胃の辺りがキュウッと悲鳴を上げた。こんな感覚はどれくらいぶりだろうか。いつも眠気を満たすのに必死で、食事に興味を向ける余裕などなかった。 香ばしく焼ける肉の匂いに思わず唾を飲む。 シャナが身支度を終える頃には、すっかり食事の準備が整っていた。 白くて丸いプレートには、大きなハンバーグが2つと、ブロッコリーが3つ、輪切りの人参が2つ、それからポテトフライが2つ並んでいた。 側には白いご飯と、味噌汁の具はワカメと豆腐。よく知っている味だからこそお腹が鳴った。 向かい合って一緒にいただきますをし、温かそうなハンバーグを一口かじる。熱い肉汁が舌の上でじゅわっと弾けた。 味付けはソースやケチャップで作ったシンプルなもので、肉の表面は少しパサついている。それでも充分に美味しく、「美味しい」と伝えるのも忘れて、シャナは夢中で頬張った。 隆弥は頬杖をつきながら、そんなシャナをにこにこと眺めている。 結局シャナはお皿を全て平らげ、ご飯は2回おかわりをした。ラップをかけたパスタとサラダまでペロリと食べてしまった。そのどれもが信じられないほど美味しく、食べ終わると隆弥の目がまん丸になっているのに気がついた。 「凄いねえ!」 「お、美味しかった、から……」 「それは良かった」 「……」 こくん。うなだれるように会釈すると、なぜだか目の奥が熱く込み上げた。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加