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狐につままれたような気持ちになる。
ダイニングテーブルには料理が置かれていた。
ラップのかかったパスタとサラダ。
もしやと思って見つめていると、ああ、と隆弥が振り返った。
「起きたらいつでも食べられるように用意してたけど、せっかくだから一緒にあったかいの食べよう。もう少しでできるから……よ、っと」
慣れた手つきでフライパンのガラス蓋を取り外す。中から現れたのは肉厚のハンバーグだった。大きなものが4つも詰まっている。
「いやでも……」
「遠慮しないで。お腹すいたでしょ?」
お腹、すいたでしょ……。
問われると胃の辺りがキュウッと悲鳴を上げた。こんな感覚はどれくらいぶりだろうか。いつも眠気を満たすのに必死で、食事に興味を向ける余裕などなかった。
香ばしく焼ける肉の匂いに思わず唾を飲む。
シャナが身支度を終える頃には、すっかり食事の準備が整っていた。
白くて丸いプレートには、大きなハンバーグが2つと、ブロッコリーが3つ、輪切りの人参が2つ、それからポテトフライが2つ並んでいた。
側には白いご飯と、味噌汁の具はワカメと豆腐。よく知っている味だからこそお腹が鳴った。
向かい合って一緒にいただきますをし、温かそうなハンバーグを一口かじる。熱い肉汁が舌の上でじゅわっと弾けた。
味付けはソースやケチャップで作ったシンプルなもので、肉の表面は少しパサついている。それでも充分に美味しく、「美味しい」と伝えるのも忘れて、シャナは夢中で頬張った。
隆弥は頬杖をつきながら、そんなシャナをにこにこと眺めている。
結局シャナはお皿を全て平らげ、ご飯は2回おかわりをした。ラップをかけたパスタとサラダまでペロリと食べてしまった。そのどれもが信じられないほど美味しく、食べ終わると隆弥の目がまん丸になっているのに気がついた。
「凄いねえ!」
「お、美味しかった、から……」
「それは良かった」
「……」
こくん。うなだれるように会釈すると、なぜだか目の奥が熱く込み上げた。
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