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「そういえばシャナ、眠りながら泣いてたみたいだけど、夢でも見てた?」
「えっ……」
夢。そういえばそんな記憶があった。
あれはそう、確か──。
「遊園地、に、パ……父と、メリーゴーランドに、乗って……」
「なるほど、いい夢だね。思い出でもあった遊園地?」
「……ない」
「うん?」
「ないの、父と遊園地に行ったことなんか。誰とも、メリーゴーランドに乗ったことなんかない」
「……」
「なのに夢には見るなんて、へん……」
「シャナ」
隆弥はガタリと立ちあがった。こちらまで近づくと、腿の上で拳を握るシャナの体を抱きしめる。
すると一度引っ込んだ目の奥の熱が戻り、それが倍になってシャナの頬を濡らした。
ゆっくりと背中をさすられる。
「……っ!」
不思議だった。人に弱みを見せるなんて。それも昨日会ったばかりの人に。
不思議なことはあり過ぎた。
どうしてこんなに眠れたのだろう。
安心しているのだろう。
お腹が満たされているのだろう。
心も満たされているのだろう。
どうしてこんなにも。
素直な痛みが溢れるのだろう。
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