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「今夜もうちで休むといい。さすがにもう、寝られないかもしれないけど」
そんな隆弥の予想に反し、泣き疲れたシャナの瞼はとろんと重くなった。身体中が疲労を訴え、寝ても寝ても寝足りない。そしてまた深い眠りに落ちていった。
次に目覚めた時、時計は12時5分を示していた。
また半日近くも寝ていたらしい。
「よっほど眠かったんだね。良かったじゃない」
隆弥が出勤前の家事をこなしながら視線をくれる。
「どうする? 家には……」
「帰り、ます」
「だね。お昼できてるから食べたら一緒に出よっか」
ダイニングテーブルの上には既にほかほかのハムエッグとトーストとサラダがのっている。
シャナの席と思しき位置にはプリンまで付いていた。3個1パックで売っているタイプの物だ。
本格的に子供扱いというか、私は小学生かと思ったが、腹の虫には勝てない。そしてやっぱりプリンは美味しかった。
身支度を終えた隆弥は白いワイシャツにダークグレーのスーツを着込み、やや光沢のある青いネクタイを締めていた。髪はワックスで簡単にセットされている。
かっこいい、と思った。
「……ねえシャナ」
キュ、とネクタイを整えながら隆弥がつぶやく。
「変なこと聞くようだけど、きみって魔法とか使える人?」
「……。え、何ですか?」
「だから魔法」
本当に変なことを聞かれた。
「……チガイマス」
棒読みで答えると、隆弥はやや疑うような目つきでじっ……とシャナを見つめたあとで、
「だよね、ごめん」
作り笑顔で会話を切り上げ、忙しそうに歩き回った。
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