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嫉妬とケーキ
2日ぶりに帰ったアパートは酷い有様だった。
玄関には郵便物やチラシや宗教の勧誘雑誌が溢れかえっているし、ミュールやスニーカーはそこら中に散乱。
脱衣所と廊下には洗濯物の山がそびえ、キッチンのシンクにはありとあらゆる食器がパズルのように挟まっている。
空き巣にでも入られたかのような無残さだ。
今まで眠気のせいで掃除する気など全く起きず、こうして頭がスッキリしてくると己の異常さがよくわかった。
「私のバカ……!」
めまいしながらキッチンに入り、まずは調味料と乾物の隙間からゴミ袋を発掘。それから家中の掃除に明け暮れた。
「っは──…」
どうにか床が見えて来る頃には、夕暮れが迫っていた。
柱の前に座り込み、コンビニで買ったおにぎりを食べる。廊下に連なるゴミ袋を見て満足し、ペットボトルの麦茶を飲み干した。もうひと踏ん張りでカタがつきそうだ。
快い疲れで眠気に誘われると、また隆弥のベッドが恋しくなる。
隆弥には別れる間際、『夜になったらまたうちに来るといい』と言われた。
その好意を受け取る前に、シャナは自らのことを明かした。
『本名は沙那。相沢沙那。でもずっとシャナで通してる。歳は17。それでもいいの?』
『じゅ、17……。いいのかと聞かれると、そりゃダメなんだけど。生徒と同じ歳の子を連泊させるのは気が引ける……。けどきみを野放しにしたら、また犯罪に走らせるだろ?』
諦めの溜め息をつきつつ、
『俺はだいたい午後10時半過ぎには家にいるから、眠りたくなったら早めにおいで』
はいこれ、連絡先。小さなメモをシャナに手渡し、バレたら懲戒免職もんかなぁ、と力なく笑った。
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