嫉妬とケーキ

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乾いた服をコインランドリーに取りに行き、しまい込んだところで今日の作業は終了にした。ゴミは指定日の朝に走るしかないだろう。 シャナは中学の修学旅行で使った以来持ち腐れていた黒い旅行バッグを引っ張り出すと、そこに下着類やらパジャマ、着替え、愛用のドライヤー(三箇所からマイナスイオンが出てスカルプケアモードもある)、ヘアアイロン、シャンプー類にボディソープ、メイク道具……etcを所狭しと閉じ込めた。 10時過ぎには家を出て、隆弥のアパートの周りでぶらぶらと帰りを待ち、姿が見えると物陰に隠れた。 隆弥がすっかり帰宅したのを見計らってからドアベルを押す。さすがに2人同時に入れば人目につくと思ったからだ。 「……お邪魔シマス」 「はいいらっしゃい」 こうして始まった半同居生活は、シャナにとって実に快適なものとなった。 朝は10時過ぎにゆっくりと起きて家事を手伝えばいいし、一緒にお昼を食べたらめいめい家を出る。隆弥は仕事へ、シャナは自宅へ。 その後は家でまったり過ごしたり、買い物に出掛けたりする。そうして夜には合流し、遅い夕飯を一緒にこしらえて眠りにつく。 隆弥の側なら雪深い夜でも、父の声を思い出す夜も、ぐっすりと眠ることができた。
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