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そんな暮らしが半月も続いた頃、シャナはようやくあることに気がついた。
「そういえば隆弥さんって、恋人とかいないの?」
こんなにイケメンなのに。とは、気恥ずかしくて言えなかったが。
「いないよ。いたらシャナを呼べないでしょ、さすがに」
「うん」
クスクス笑って、でも畳み掛けてしまった。
「いたこともあるんでしょ?」
内心、ノーという答えを期待している自分がいた。けれど隆弥は少し考えてから、
「まあね」
と言って顎をかいた。
シャナの胸がドキリと波立った。
「へえ。どんな人だったの」
なるべく表情を変えず問いかけると、そうだなぁ、と隆弥は左上を向いた。
「同じ大学で付き合い始めて、就職してからも少し続いてたけど」
「けど? 何で別れちゃったの?」
「彼女、国際弁護士になりたいって夢があってね。日本の弁護士資格は取ったから、次はアメリカに留学して、向こうでも資格を取りたいって」
「べっ!? 弁護、士……」
しかも国際弁護士だ。国際弁護士が実際どのようなものかシャナにはよく分からなかったが、普通の弁護士でも充分凄いのだから、それ以上に凄いのだろうと思った。
「そ。それで置いてかれちゃった」
あはは。何でもない風に話す横顔が寂しそうに見えてしまうと、シャナの胸は鉛を吸ったように、ずん……と重くなった。
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