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ある秋の晩、父は指定した時刻になっても迎えに現れなかった。連絡も取れない。施設にもシャナにも、不安と緊張が走った。
突然、子供を残して親が蒸発する。そういうケースは稀にある。間近でそんな子を見てきたシャナは怯えて泣いた。
父を待つ二日目の夜、施設の窓から大きな満月がシャナを照らした。
それはまるで巨大な化け物の口。
シャナの不安ごと丸呑みにしようと襲いかかってくるような。
シャナはふいに、うまく息を吸うことができなくなった。それは次第に激しくなって、もがき苦しみ布団に倒れ込んだ。
結局のところ父は酔い潰れて携帯をなくし、自家用車の中で眠っていただけだった。
が、それ以来シャナは満月を見ると、たびたび過呼吸に襲われるようになった。
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