渇いた夜に

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17歳。 同じ年頃の娘たちはみな両親と、あるいは片親とともに安穏な眠りについているのだろう。 その身代わりをシャナは年上の男たちに求めた。 熱い血の通った肌に触れていないと、いっときだって眠ることができなくなった。 スマホの待受は午前2時を明るく示している。 シャナは焦っていた。 昨日も今夜も、なかなか良い相手が見つからない。丸二日寝ていない頭は限界寸前だ。 さらにまずいことには、今夜は、満月だ──。 「……っは、……」 どくり……、心臓が嫌な音を立てた。 瞬間、シャナの周囲の空気だけが薄くなったように感じた。 憎らしいほどに輝く月が、二重三重に歪み始める。 目を逸らしてももう遅い。喉が、肺が、空気の吸いかたを忘れていく。 「っは、は、……あっ、……」 呼吸が止まれば、人は死ぬ。 その当たり前の帰結がシャナを追い詰める。 もう何度も経験してきた恐怖の渦。
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