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私は息を弾ませ、勢いよく襖を開いた。
「みんな、久しぶり!」
お酒を片手にお喋りしていたみんなが、こちらを向いて目を丸くする。
一人の男性が笑顔で言った。
「神田さん、久しぶり。空いてる席に坐ってよ」
三月下旬。今宵は、待ちに待った同窓会。中学時代のクラスメイトに、七年ぶりに会いに来たのだ。
私は、地元の七姫西中学校からたった一人、市内の難関校を受験して、進学した。その後、地方の大学に行ってしまったので、昔馴染の友達となかなか顔を合せられなかったのだ。
私は座布団に正坐して、みんなの顔を眺めた。
当時と比べると、髪型も服装も大人びていて、ぱっと見では誰が誰だか分らない。七年も経っていると、顔立も変ってしまうのだろう。
「ねえ、栞里なの?」
声をかけられて、私は振り返った。
隣に坐っていたのは、白いセーターに身を包んだショートヘアの女性だった。私はきょとんとしてしまった。
こんな子、同じクラスにいたかな?
彼女は目をきらきらさせて、私の手をぎゅっと握った。
「久しぶり! 綺麗になってたから、全然わかんなかったよ。メイク変えたの?」
「ひ、久しぶりだね。美容系動画とか見て、いろいろ勉強してるんだ」
笑顔を繕い、私は答えた。
本当は、彼女の名前すら思い出せない。でも、こんなに再会を喜んでくれているんだ。正直に「憶えてない」と言うのも、申し訳なく思った。
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