*入れ替わり同窓会*

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 昔、こんなお話を読んだことがある。  電車に乗ってうとうとしていた男性が、見知らぬ駅に辿り着いてしまう。スマホを開いてみると、訳の分らないネットニュースばかりが並んでいた。ホームには誰もいなくて、ひっそりとしている。彼は、今までの世界に似ているけれど少し違う、別の世界に迷い込んでしまったのだ。  パラレルワールドが存在するというのは、全くの空想のお話ではない。物理学者のあいだでは、私たちの住んでいる宇宙とは別に、少しづつ違ったいろいろな世界があるのではないかと、真剣に議論されているのだ。  そう言えば今日は、ちょっと大きめの地震があった。万が一にも、その時のはずみで、私だけ別の世界に飛ばされてしまったのだとしたら……。 「わあ、懐かしい!」  黄色い声が上がった。  向いの席の人たちが、中学の卒業アルバムを開いている。気付くと私は身を乗り出していた。 「ちょ、ちょっと見せて」  三年二組の頁を慌てて探す。開いてみて、私は愕然とした。  知らない顔と知らない名前がずらりと並んでいる。「神田栞里」という名前は確かにあった。だけど、そこに載っていたのは私ではなく、眼鏡をかけた見知らぬ女の子だったのだ。  私を見据えて、一人が言った。 「君は……本当に神田さんなの?」  私はどきりとした。 「僕の知ってる神田さんとは、全然顔が違うし。それに、さっきから戸惑ってるように見える。君は一体、どこの誰なんだ」  部屋がしいんとした。こめかみに汗を滲ませて、重い口を開く。 「わ、私は――」  その時、襖が勢いよく開いた。 「みんな、久しぶり!」
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