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その会話に気持ちが煽られたのか、暁生の口からぽろぽろと不満が溢れ出した。
「······大体よ、こういうところは全部適当だろ。確かに、この世ならざるモンは封印とかの処置さえちゃんとしとけば下手に脅かされることはないだろうけど、だからってこの有様じゃ、寧ろ呪われそうだろ。しかも俺達が、だぞ」
途端に春依が振り返った。
「そんなこと言ったら暁生だって、新しく対応したモノの記録雑じゃん。何時だか透雨が書き直してたぞ」
先程の同調が嘘のような切り込みの良さだ。
「······記録の書き間違いのひとつやふたつ、誰にだってあるだろ」
「扱いもだよ。十分以上放置しといたら発火する〈浄龍の壺〉が置きっ放しになってるのを見た時は戦慄したけど。こいつ正気か? って。慌てて封印したから何もなかったんだぞ」
「······置きっ放しじゃねぇよ。置いといたんだよ」
「どう違うんだよ」
「二人とも、捜してる?」
透雨からすればただの問い掛けだったのだが、妙に二人揃って「「 あ、はい 」」と返ってきた。
それから、この作業とあわせて記録もつけておけば整理の続きにもなる──という話になって、三人による捜しものは黙々と続けられたのだった。
「──一旦、休憩にする?」
春依の問う声で、我に返るような空気が満ちた。
透雨が顔を上げて見回すと、三人それぞれを包囲するようにモノが埋めつくしていた。······それは、未だ捜しものが見つかっていないことも表していた。
この部屋には時計が無いので、春依が廊下へと出て行く。戻ってくると「あと十分で十二時」と告げた。
「あー······。昼飯にするか」
埃っぽさを払うように手をはたいて、暁生が腰を上げた。
「まだ掛かりそうだから簡単なもんにするけど、あるもので良いか?」
「良いよ、なんでも。塩むすびでも十分だよ」
とは春依。しとせ屋の料理番は暁生である。
暁生が台所へ向かうと、透雨達は周囲を眺めて、
「······人形だったら直ぐ見つかるんじゃと思ってたけど、意外に見つからないもんだな······」
「うん······」
兄達には目当ての〝人形〟のことがよく分からないので、それらしきモノの都度透雨に確認するのだが、今のところ手掛かりになりそうなものさえ見つかっていない。
······午前を使い切ってしまった。
透雨は、思いついたことを口にした。
「······これ、戻すの大変そうだよね」
「あ、それ······言っちゃう?」
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