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「主人がいるならうちで引き取る訳にもいかないしな······。一時お預かりみたいになるけど······」
「つーか、その前に、コイツ悪いもんは引き連れてないんだな? 本当に悪いもんに属する側じゃねーんだな?」
「あ、それは間違いないと思うよ」
透雨が言った。
「手帖の方から僅かに感じる力も、悪い気配じゃないし」
そう言うならそうなのだろう。
「そんで······その主人が現れなかったら、どーすんだよ······?」
悲しげに身を丸めている狛犬 (仮) を見る。二人も目を向け、
「「 ······うちのコ?」」
「嫌だぞおい」
そもそも、使い魔というものは主と特別な契約を交わしている筈なので、おいそれと第三者が引き取れるものではない。
いくら手帖が主の元を離れたといっても、それとはまた別の問題である。
狛犬 (仮) の話を聞く限り、まだ主との契約の繋がりは切れていない様だし。多分。
加えて、暁生の個人的な感情を持ち出すなら、この狛犬 (仮) がうちに居るのはなんか嫌なのである。
「で、でも、このまま外に出せないよ······?」
透雨が、フルフルと全身を震わせている狛犬 (仮) を心配そうに見下ろす。
駆けて来る足音が、戸の向こうで響いたのはその時だった。
トントントン! と焦った調子で店の戸は叩かれ、
「──すみません! お店の方はいらっしゃいますか!?」
若い男の声だった。春依が急いで戸を開ける。
「すみません、こちらに手帖とコマ······あっ!」
彼は、縮こまる狛犬(ポメラニアン)に目を留めた。
ぱぁっと明るい顔で両腕を広げる。
「コマ~~っ」
大粒の涙を煌めかせて、狛犬 (仮) の姿が翻った。
『ごっ······、ご主人~~っ!!』キャウ~~ン
ひし······! と熱い抱擁が生まれた。
「ごめんよ······! ひとりにさせて!」
『ご主人~~っ』クゥ~ン
春依が「感動の再会かな?」
暁生が「どこら辺が感動だ?」
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