三 狛犬の話───かくも災難なひととき

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 そんでつまり······理由として言い換えるならば、何でも務め一番であるため、好きなこともできない(好きなものも食べられない)生活に嫌気が差して、だろうか。 『──ということは、我が嫌になって捨てたんじゃないんですね······!? 』クゥ~ン  あ、忘れてた。今日の事の発端はコイツだったな、と思い出した暁生は狛犬を見る。  目を潤ませる使い魔を、少年はハッと見つめて、 「······コマ······。そうだよ······! 僕がコマを嫌いになる訳ないじゃないか! 僕の所為(せい)で、寂しい想いをさせてごめんね······!」 『ご主人~ッ!』キャゥゥ~ン 「「「 ······ 」」」  ギュウッと再び熱いハグが繰り広げられる。 「大丈夫、もうこんなことはしないよ。今日からまた一緒にがんばろう、コマ。最高の相棒! ──あ、という訳で、お世話になりました。コマも手帖も大切にお引き取りしますね······!」 『フッ、今度来る時は撫でさせてやっても()いぞ!』キャフン 「いやいらん」 「有難うございました! それでは!」『キャウ~ン( !? )』 「 ······ 」「 ······ 」「 ······ 」  すぱーん! と元気良く閉められた店の戸。  ······  ······奇妙な程の静けさが降りていた。  春依が、テーブルを振り返った。 「仕分けの続きやる?」 「おう」「そうだね」  ······皆様、物をお捨てになる時は、くれぐれも慎重に。
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