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「──それで、此処か」
暁生の言葉に、「うん」と透雨は頷いた。
翌朝になって。三人が揃って物置き部屋にいた。
店舗とは暖簾で隔てて奥、お客様からは見えない位置にある部屋だ。透雨にとってはよく出入りする所でもある。
春依が振り返って、
「その、女の子ってさ、〝あっち側〟の······だよね。透雨は何だか予測ついてたりする?」
「んん······多分だけど、〈四季揺籃〉シリーズの子じゃないのかなって······。昔にうちに引き取られて、保管されてあるはず······だから、昨日逢ったのは〝魂〟の方で、彼女の本体の方は何処かで収蔵されて眠っていると思う」
「透雨と暁生は、最近この部屋の整理してたんだよね。その時何か──特別妙なモノとか······」
「うーん······まだ整理しきれてない所にあると思うんだよね······。彼女が伝えに来たのも、此処を最近になって整理し始めたからだと思うし」
「成る程······」と頷く春依に。
「······なんでお前、透雨にばっかり訊くんだよ?」
「······透雨の方が話が確実かなって」
「······異論もございません」
暁生が口を噤んだ。
──昨日のことというのは、つまりは透雨の夢であった訳だが。
それについて、兄二人は問い掛けない。
昔からよくある事なのだった。
兄達には一度もないらしいが、透雨は、こういう夢の中で何かから語りかけられるのはよくあった。
「でも······そうなると、『みつけて』っていうのは具体的には何を見つけ出せばいいんだろう」
「大切な······子······っつったか? 色々抽象的過ぎて見当も······」
「あ、見当はついてる」
透雨が言うと、二人は「「 まじ?」」と振り向いた。驚きに彩られた目が透雨を見つめて。
「〈四季揺籃〉という〝人形〟は四体あってね。それでひとセットなんだ。だから同じく〝人形〟を──彼女のお仲間を捜せばいいのかなって」
「そうなのか······」
「いやぁ······透雨に話が伝わってて正解だよね······。俺達が仲介しても、今頃話がややこしくなるだけだよ······」
下手すりゃ迷宮入りだな、と相槌を打った暁生は、眼前へと目を戻し。次に発せられた言葉は、しかしやや気の進まなさそうなものだった。
「で············この中から捜すのか」
一方の壁一面を埋める飴色の棚。二十の仕切りを持つそれが三つ並んでいる。
というと、三人いるのだから簡単に捜せるな、と思われるかもしれない。
が、これは棚の区切りが二十というだけで、実際にはそのひとつひとつにこれでもかと、様々なこの世ならざるモノが詰め込まれている。
天井近くまである様は、聳え立っているという光景に見えた。
さしもの春依も億劫そうで、
「······数日前で三分の一片付いたって言ってたよな」
「······しかもひとつの棚の内の三分の一だぜ」
「······こ、こりゃあ掛かるわー」
「え? 物置になかったら二階の方を捜すことになると思うよ?」
きょとんとした透雨の台詞に、二人はげんなりといった空気で沈黙した。
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