四 人形の話───四季揺籃

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「じゃあ、私右の方から捜すね」  指差して取りかかる透雨に、二人もそれぞれ溜息を()いてから棚の前へ進んだ。 「······あー、じゃあ俺真ん中の棚からやるよ。暁生は整理の進んでるところからやった方がやり易いだろ」 「了解」  ──来客があっても、声が掛かれば分かるので、部屋の戸は開け放しておくとして。  さて、仕舞われているモノは全て箱に収められている。大なり小なりの箱をひとつひとつ開けていって中を確認する訳なのだが······。  中のモノは、封印などの処置が大方済んでいるはず。いきなり箱を開けても何かが起こることはないだろう。ただ──箱そのものが封印の役割をしていることがあるので、 「あ──何か書いてあったり、札が貼ってあったりする箱は一応注意してね」  兄二人が知らない筈はないと思ったが、言ってみると、「あー」「忘れてたぜ」と思い出したような声が返ってきた。  それも無理もないかもしれない。  此処にあるモノは「保管」なので、この部屋に立ち入ること自体がほとんどない。最近になって整理し始めるまで、手つかず状態だった。  ······暁生も整理をやっていた筈だけれど。  保管する棚があるだけの部屋だから、作業はし易い。仕切りのひとつを覗き込み、透雨はまず詰められている箱を全て外に出すことにした。箱の外側に注意を向けながら、畳の上に置いていく。  と、同様の作業工程だった春依が、ふと手を止めて、 「あれ? ······これ、何かの順番ずつ入れられてあるとか、そういう仕舞われ方じゃないの? たとえば小物は小物でまとめられてあるとか、そういうのもなく······?」 「ないよ」  と透雨が頷けば、思わずといったように閉口する春依。 「その辺りの資料はないから、とにかく仕舞われていった感じ」 「だから余計に何処に何があるか分からねぇんだよ······。俺もそれに気付いた時は絶句したけどな」  そう言う暁生の周辺は、出されたモノが広がりごちゃごちゃとしていた。目を逸らすようにして、春依が「そうか······」とだけ返す。
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