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「で······結局よ······振り出しに戻ったっつーか······見つける方じゃなくて、見つけてって言った方が出てきたんだろ? どうするよ······。また続きからか」
「あ、いや──。大丈夫だよ」
疲労の露わな目で散らかり気味のモノと箱の山を見た暁生とは、反対に。
透雨の目は、まだぎっしりとモノで占められている棚と、宙に向いていた。
「どちらか片方でも見つかれば、残滓を······〝魂〟の繋がりを辿っていけば······」
透雨は目を凝らす。
実をいうと、透雨と兄達では視え方が違う。
魂や邪気の視え方が。
兄達にはぼんやりと淡く視えるものが、透雨にははっきりと視えるのだ。それから何より──、
関連したものに伸びる、魂の繋がりが視えるのは透雨だけだ。
今の透雨の目は、箱におさまる秋羽の白い光──彼女の魂から伸びる、細い光を、捉えていた。
透雨は立ち上がり、光円の視える棚へと近寄った。兄達が黙って見守る。
──真ん中の棚の下方。まだ誰も手をつけていないところだった。
透雨は手前にあるモノを先に下ろし、奥のスペースを占めていた箱をそうっと取り出す。秋羽の時もそうだったが、不思議と重さを感じないのだ。
「それか?」
「うん······」
慎重に蓋を開けるにあわせ、二人も側に寄ってきて、覗き込む。
「······冬の子だよね」
「うん。······冬霞ちゃん」
同じように膝を抱えて眠る、真っ白な〝人形〟。
ゆるく波打つ銀の髪は透き通るようで、レースをふんだんに織り交ぜられた白のドレスはふわりと広がる。
儚さに身を包む彼女もまた、褪せてはいない。今にも目を覚ましそうだ。
「······良かった······。これで揃ったね」
「こんな新品みたいな状態なのも、特殊な素材で出来てるからか? ······まあなんにせよ、マジで見つかって良かった······。此処だけじゃなくて二階にもなかったらどうしようかと思ってたわ······」
「暁生ー安心してるとこ悪いんだけどさ、次これら戻す番な?」
「······もうちょっと後で言えよ······やる気失くすだろ······」
そっち側棚に仕舞うのは暁生だからさ、と突き放す春依の声。
それを聞きながら、ほっと息を吐いた透雨は、冬霞の箱を確認しようとして──固まった。
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