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しとせ屋は、その日······も、ぼちぼちの入りだった。
開店して直ぐの妖狐のふたり連れと、一時間程経ってからの木精に、二時間程空いてからの猫又──。
それからは、ぱったりと客足が途絶えた。
しとせ屋ではすっかり「まあいつものことだ」という意識が定着しており、焦る気配は湧き起こらず、昼を経た今は、閑散した空気が広がっていた。
のんびりしていた。
天気がいいのも相俟って、のどかな静けさだった。
──と、そこに。
また新たにやって来たのは······。
「こんちはー」
やや癖のある黒髪に、少々吊りめの双眸。
袖をまくった白のワイシャツとグレーのズボンは、何処かの制服のようで。肩には紺の鞄が掛かる。
彼の名は、柘 統理。
近くの桜場高校に通う一年生。
どこからどう見ても、誰が見ても、まったくの人間である。
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