1 不吉な予言

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1 不吉な予言

「ひどく残念だが、このままではお前は災いを成す悪霊になってしまうぞ」 と、あの世に来る度に会う爺さんが、俺に言った。 「は?」 ギョッとなった俺が思わず声を上げると、爺さんは禍々しささえ感じるきびしい表情で俺を見た。 「うーん。これはもう手の施しようがないかもしれない」 「なんだよ、災いって」 「災いとは、人が人を傷つける醜い行為のことじゃ。例えば盗みや騙り」 「……嘘をつくのもネコババするのも、誰でもやることだろ?」 と、俺は強がった。ビビっていると思われたくないのと、自分がそんなことになると信じたくなかった。しかし重ねて、 「人殺しになることもか?」 と、言われるとだんだん不安になってくる。 「これがはっきりとした形になったとき、それがお終いじゃ」 俺の手首には、もやっとした小さなあざがある。何故か何度生まれ変わってもハンコを押したようにそのあざはいつもある。爺さんがそれを指差した。 「お終いって?」  じわっと、無いはずの足の方から震えが這い上がってくる。 「お前が悪霊になり無限地獄に落ちるということだ。惨めだぞ。生も死も光も闇もない世界に閉じ込められ最後は消滅するしかない」 「嫌だ! なんで俺がそんな目に」 「お前が最初に死んだときに残した、強い執着未練のせいよ」  俺は戸惑った。これまで何度か転生したが、大体自分は短命で、執着だの未練だのといった強い感情を抱く劇的な人生はなかった……。  死んでも残る未練って、何だ? 考え込んでいると、虹色の光が俺を包み込む。新しい母親の胎内に宿る時が来たのだ。 「ヒントをくれ。思い当たることなんてない」 と、叫ぶ俺の視界が眩しい光で霞んでゆく。爺さんの声が細く遠く聞こえてきた。 「未練を断ち切れ。さすれば救われよう」
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