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「懐かしいな、雰囲気は全然変わらないですね」
「そうですか?」
彼からすれば、オーラを消した芸能人のような今のわたしこそ、本来のわたしなのだ。化粧を無理やり剥がされた気持ちになって、顔が熱くなってくる。
「諦めずにいてくれて嬉しいですよ。もう怖くないみたいですね」
彼が言うのは、子供の頃の話だ。当時、本ばかり読んでいたわたしは、視力が悪かった。夜空を見上げても眼鏡が無いと星が見えない。
このまま目が悪くなったら、星を見ることが出来なくなるのではないか。ある日突然、そんな恐怖感に囚われてしまった。
彼にもそんな話をして励ましてもらったが、しばらく星を見るのをやめてしまったのだ。
ほんの二ヶ月程度だったはずだが、進学にあわせて引っ越してしまい、彼とはそれ以来会うことはなかった。
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