宙を見上げて

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 わたしが住む街から車を少し走らせると、天体観測スポットの高台がある。高台へ上る道は冬季は通行止めとなり、明日が丁度開通初日とあって、わたしも気合が入っていた。  前日の内から準備し、十四時の開通時間に合わせて、二時間以上前に駐車場に到着するように出かけた。  入口手前の駐車場に着いて、わたしは唖然とした。てっきり一番乗りだと思ったのに、既に車が一台停まっているではないか。  あの車には見覚えがある。大きな天文イベントがあるたびに必ず現れる、ナンバー〝215〟の青いセダン。天文学の父、ガリレオの誕生日だ。あれを見るたびに、自分の車に〝2525〟をつけているのが少し悔しくなる。  少し離れた位置に車を停め、例のセダンに目をやると、窓ガラス越しに運転席に座る人物が見える。  いつもと同じようにニット帽を被り、マスクをしている。顔はほとんどわからないが、体型から、かろうじて男であることはわかる。
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