宙を見上げて

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「はい、像が曇ってしまっているんです」 「ちょっといいですか」  彼はわたしの望遠鏡の接眼レンズを覗き込むと、固定ネジを緩めて調節を始めた。 「レンズの内側に湿気が入りましたね。これは一度分解しないと駄目です」 「ですよね」  わざわざやってきて、こんな初歩的ミスをやらかすとは。どうして駐車場で点検しておかなかったのだろう。テンションが上がっていたというのもあるが、仕事だったらあり得ないミスだ。自分が情けなくなって、大きなため息が出た。 「良かったら、こっちを使ってください」 「……え?」  彼は手元のライトで自分の望遠鏡を示した。 「いえいえ、お邪魔したら悪いですし」 「大丈夫ですよ。こういう場合に備えて二つ持ってきているので」  彼が見せてくれたのは、コンパクトな屈折式望遠鏡。軽いので持ち運びに便利なタイプだ。 「……なんだかすみません」  無下に断るのも悪い気がして、わたしは恐縮しながら使わせてもらうことにした。
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