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「やっぱり、覚えてないですかね。もう二十年近く経ってますしね」
二十年前と言えば、毎晩星空を見上げていた、子供の頃だ。家の庭から見上げるだけでは飽き足らず、天体望遠鏡がある近所の観測所に連れて行ってもらったりもしていた。
次第に記憶が蘇ってくる。観測所に行くと、必ず先に望遠鏡を見ていて、わたしに譲ってくれる男の子がいた。
「……もしかして、〝ヒロくん〟?」
「やっぱり。久しぶりですね。お元気でしたか」
彼は嬉しそうに答えた。声変わりしているが、優しい雰囲気は当時のままだ。
「少し前にお見かけしたときに気づいたんですけど、なんだか人目を避けている雰囲気だったので、声を掛けなかったんですよ」
「あはは、なんというか、お恥ずかしい限りです」
唐突にわたしを知る人に会ってしまい、しどろもどろになる。仕事だったら絶対に見せられない姿だ。
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