恋心を自覚した日

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初めて恋心を自覚したのは学生の頃だった。 その人は、常に自分の生徒達の事を考えていて。 時に優しく、時に厳しく、誰にでも笑顔を絶やさない。 そんな人、それは俺のクラスの担任だった。 「俺はお前の事が生徒として大事なんだから言ってるんだよ」 俺がミスをして注意を受けている時に言われた時、先生の普段見せない真剣な眼差しが俺の視線と合う、ドキリと鼓動が跳ねる感覚がした。 こんな事で?と思うかもしれないが俺の初恋はこんな始まりだった。 恋心を自覚するまで、俺はずっと自分の事をノンケだと思っていたし、 男に興味は1mmも無かった。 それからというもの、学校で会うたびに上手く声が出せなくて、緊張してしまうようになった。 まだ別クラスなら救いはあったのだろうけども、残念ながら、同じクラスでHRも授業も俺の受けている専門学科も同じだったので 顔を合わせないわけにはいかなかった。 家に帰っても、友人と遊んでいても、先生の顔を思い出してしまう、恋というのは難しいものだなぁと若い頃なりに思った。 俺はその気持ちを抱えたまま、半年…2年…季節を超え、そして卒業の季節になってしまった。 卒業式後、昇降口前で皆が泣いたり、笑ったりしている中、俺はその中を抜け出し、いっそ砕ける思いで最後に告白をしようと先生の居る職員室へと走って行った。 「失礼します!…先生、居ますか?」 いつもいる席に居ないので、他の教師に聴いてみると、先生は次の年に受け持つクラスの準備の為、買い物に出てしまったらしく、もう学校には居なかった。 そこで俺は2年前に言われた言葉を思い出してしまった 「生徒として大事だから言ってるんだよ」と そうか、卒業した俺はもう生徒ではない 先生は次の生徒との新しい出会いが始まる これから俺はもう会う事も無くなるのだろう… 俺の初恋は、俺の出会いはこれで終わりだ。 そして数十年後、俺は母校の同窓会に来ていた。 年を取って髪型や体系が大きく変わった同級生達の中に、俺の好きだった先生が立っていた。 昔と変わらない視線と笑顔を絶やさないあの時の表情で俺を見つめていた ふと昔の記憶が蘇り少しだけ口元を緩ませると 目の前へ歩いていき、声をかけた。 「先生、お久しぶりです」 「久しぶり、高春、元気だったか?」 俺は静かに頷き、笑みを浮かべるのだった
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