1 繭

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   *  また、あの夢だ。  目を開けると、真っ暗な水の中にいる。  プクプク、コポコポという泡の音だけが静かに鼓膜の奥に響いていく。  あまりの寒さと息苦しさに、胎児のように身を縮めてそっと自分の体に触れてみるが、何も感じない。  ただ、ぬるりと皮膚が剥がれ落ちていくような感触だけが指先に残る。  顔を上げると、頭上からほんのわずかな明かりが射し込んでくるのが見える。  ゆっくりと手を伸ばし、少しずつ、その光の方へと向かって体をくねらせていく。  赤く、赤く、どこまでも続く、  水の中を。
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