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悲鳴……いや、絶叫だったのかもしれない。
金切り声を上げる私の声が、室内に響き渡る。
切断された衛藤凪の生首が机の上に血の跡を残して転がり、首を失った胴体が、動脈から血飛沫を上げながらがくりと力なく椅子の背もたせに寄り掛かる。
「ひ……」
目を見開いたまま転がる生首を見て、私はふらふらと後ずさる。
「こんな……こと」
その時、背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「繭憑の糸は、こういう使い方も出来るのよ。人間の首を断ち切るくらい、簡単なこと」
「橘……千霧」
顔色を失って振り返る私に、本棚の陰から姿を現した橘千霧は冷ややかな視線を向ける。
「まさかここに来れば助かるかもしない、なんて思ってたんじゃないでしょうね? 人間らしい浅はかな考え方ね」
「どうして……ここに」
「この女のこともとっくに調べてあったわ。言ったでしょう? 繭憑に関わった人間は全て殺すと。それはたとえ協力者であろうと関係ない」
「あなた……は」
「く……く。民俗学の研究者? 少しばかり呪いに詳しいからといって、私の呪いに抗う術はないわ」
机の上に転がる衛藤凪の生首を見下ろしたまま、彼女は言う。
「別に放っといても構わなかった。この女に出来ることはなかった。でもあなたがここに来た以上、殺すしかなかった」
「じゃあ……私が」
「そう、羽吹結衣、あなたに関わらなかったら、この女が死ぬことはなかった。この大学に居た警備員たちも」
「ま……さか」
「おかしいとは思わなかった? この敷地内に誰も居ないことに。あなたの邪魔にならないように、守衛や警備員も全員殺しておいてあげたわ」
「なんて……ことを」
言葉を失う私を見て、彼女は嘲るように笑う。
「羽吹結衣、あなたが藻掻けば藻掻くほど、こうして犠牲者は増え続けていく。まだ分からない? あなたが生き続ける限り、あなた自身が呪いを振り撒いているってことに」
「私……が」
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