6 エピローグ

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「伝えたい……こと?」 「ええ……」  病室の窓際から仁和の方へと向き直り、私は静かに言う。 「両親とも相談したんですが、近々転校することになって」 「転校?」 「ええ、色々なことがあったので、一度環境を変えた方が良いと思って。なのでこうして会えるのも、これで最後になると思います」 「……そうか」  仁和は一度口ごもって何かを言い掛けるが、私のバッグに結え付けられている赤い紙人形を見て全てを察したのだろう、小さく頷く。  それは私からの忠告……いや、警告に他ならなかった。  私はもう二度と仁和の前に姿を現すことはないだろう。もしその時が訪れたとしても、その時の私は、今の私とは変わっている。  黙り込む仁和を残して、私は病室を後にした。  病院の建物から出ると、空の景色はオレンジ色から薄い灰色へと変わろうとしていた。 「……」  おそらく灯乃……いや、繭憑は、自分の次の()(しろ)を探していたのだろう。橘千霧がそうであったのと同じように。  胸に手を当ててみると、そこには自分の心臓の音とは違う、別の鼓動が確かに聞こえてくる。  あの溶け出した繭の中で私は繭憑と融合し、そして再び羽吹結衣という一人の肉体として再構成された。  今も私の中には……、間違いなく繭憑が存在している。脈々とその憎悪の種を息づかせながら。 「……」  夕刻の空を見渡すと、東の空に、少し歪んだ琥珀色の繭月がうっすらと浮かんでいるのが見えた。            (了)
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