僕の家庭教師

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 翌日の昼下がり、連日の猛暑が続いていて、部屋の中は冷房がよく効いている。外からはセミの鳴き声が聞こえる。そのせいか、なかなか昼寝ができない。まだ疲れがたまっているので、昼寝をしたいのに。  知也は悩んでいた。知也の成績はあまりよくない。成績を上げようとしても、わからないことだらけだ。田川先生は行けと言われているんだから、行かなければ。でも、本当に行けるのか、不安だ。どれだけ勉強しても成績が上がらない。このままでは共進学園に受からない。みんなの期待に応えられない。どうしたらいいんだろう。 「はぁ・・・。成績よくないのに、大丈夫だろうか? とにかく頑張るしかないのかな?」  知也は仰向けになって、天井を見ていた。明日から受験勉強だ。気合を入れて頑張らないと。 「さて、頑張るか。この夏休みが勝負時だ!」  知也は起き上がり、机に座った。これから受験勉強だ。やらなければ始まらない。みんなの様子はわからないけど、部活を引退した同学年の子はしているだろう。そう思うと、自分も頑張らなければと思ってしまう。  だが、いざ始めてみると、わからない事ばかりだ。特に算数や英語がわからない。このままでは夏休み明けの実力テストでいい成績を取れない。そして田川先生に怒られてしまう。その思いが、知也を動かしていた。 「うーん、これ、どうだったかな? なかなかわからないなー」  そこに、麻里子がやって来た。今はとりあえず、ゆっくり休んでほしい、そして、気持ちを整えてから受験勉強をしてほしいと思っている。 「頑張ってる?」 「うん。でも、なかなかうまくいかないんだ」  と、麻里子は知也の頭を撫でた。 「なせばなると信じて!」 「わ、わかったよ」  と、麻里子は持ってきたバニラアイスを差し出した。食べてほしいようだ。 「はい。アイスでも食べて元気出して!」 「ありがとう!」  知也はバニラアイスを食べ始めた。とてもおいしい。いつもよりおいしいのは、どうしてだろう。 「時には休息も大事だよ!」 「そ、そうだね・・・」  突然、麻里子は知也の肩を叩いた。どうしたんだろう。知也は首を傾げた。 「頑張りなさいよ!」 「うん!」  麻里子は部屋を出ていった。だが、知也の顔は浮かれたない。麻里子にも期待されている。だけど、成績は良くない。どうすればいいんだろう。全く先が見えない。だけど進まなければ始まらない。  食べた後、知也はすぐに勉強と再開した。いまだに疲れと不安がたまっている。この先、どうすればいいんだろう。受験勉強をするしかないが、今の状況では全く先が見えない。このまま共進学園の入試に落ちて、坊主になるのを待つしかないんだろうか? だけど、進めないと。 「頑張れと言われてもなぁ・・・。なかなか進まないなー」  気が付けば、夕方になっていた。今日は出張でいなかった父、丈二郎(じょうじろう)が帰ってくる。1日遅れで自分をねぎらうそうだ。だが、本当にねぎらう時だろうか? 本当にねぎらう時は、この先の入試で合格した時なのに。まだ喜ぶには早いように感じる。 「知也ー、ごはんよー」  麻里子の声だ。晩ごはんができたようだ。 「はーい!」  知也は1階に向かった。今日は丈二郎が帰ってきている。サッカー部を引退した知也に、どんな反応を見せるんだろう。楽しみだな。  知也は1階にやって来た。そこには麻里子の他に、丈二郎もいる。丈二郎はすでに椅子に座って、晩ごはんを食べようとしている。 「知也、お疲れさんだったな」 「うん!」  丈二郎は絵を浮かべている。今日までサッカーを頑張ってきた知也をねぎらっているようだ。知也はほっとした。サッカーを頑張ってきてよかった。 「県大会行けなかったけど、よく頑張ったじゃん!」 「ありがとう! でも、その先に進みたかったな」  丈二郎は肩を叩いた。それでも知也は頑張ったと思っているようだ。 「その気持ち、わかるよ。高校で勝ち進んで、全国行けるように頑張れよ!」 「今日は知也のために、少し豪華にしてみたのよ。おいしい?」  今日は唐揚げをはじめ、様々なおかずが並んでいる。丈二郎もおかずを見て、喜んでいる。丈二郎は瓶ビールをコップに注いだ。 「うん。そうだ知也、受験勉強、頑張らなんとな」 「う、うん・・・」  だが、知也は自信が出ない。共進学園に本当に合格できるんだろうか? 不安でしかない。丈二郎の期待にも応えられないかもしれない。 「どうした?」 「なかなかうまくいかなくてさ」  丈二郎は知也の事を心配していた。頑張ろうという気力はないんだろうか? やってみなければ始まらないだろう。頑張ってみろよ。 「その気持ち、わかるよ。でも、将来のためなんだから、頑張れよ」 「うん・・・」  それでも落ち込む知也に、丈二郎は喝を入れる。何としても受験を頑張ってほしい。 「そんなに落ち込むなよ。リラックスリラックス!」 「わかったよ」  知也はあっという間に食べ終わった。おいしかったけど、やはり受験の事を考えて落ち込んでしまう。サッカーを頑張ったねぎらいのごちそうなのに、どうしても落ち込んでしまう。 「ごちそうさま」  知也はすぐ2階に上がった。すぐに受験勉強を始めないと。大変だけど、やらなければ始まらない。 「もう2階に上がるのか」 「勉強しに行ったみたい」  麻里子は笑みを浮かべた。受験勉強を頑張り始めたようで、ほほえましい。丈二郎もそれを喜んでいる。 「頑張ってるみたいで、嬉しいね」 「うん」  2人はその後もごちそうを食べ続けた。丈二郎はコップに入ったビールを飲み、くつろいでいる。いつかいい高校、大学に進学して、知也と飲みたいな。そのためには、いい高校に、いい大学に行ってもらわないと。
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