僕の家庭教師

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 あっという間に夏休みも終わりが近づいてきた。知也は着々と夏休みの宿題を進めていき、昨日、やっと終わった。だが、勉強に終わりはない。高校受験が終わるまでが勝負だ。今日も朝からまた勉強だ。奈美恵先生と頑張らないと。  知也は目を覚ました。いつものような朝だ。朝から暑いが、徐々に涼しくもなってきた。だが、まだ日中は冷房が欠かせない。冷房をかけないと、勉強がはかどらないほどだ。 「おはよう」  声をかけたのは奈美恵だ。当然、麻里子にはわからない。 「おはよう」  声をかけると、知也は1階に向かった。まずは朝食だ。朝食を食べないと、勉強ができないだろう。  1階のダイニングにやってくると、そこには麻里子がいて、いつものようにテレビを見ている。だが、知也はそんなのを見る暇がない。勉強が第一だ。  知也は椅子に座ると、すぐに朝食を食べ始めた。テレビには全く興味がなく、黙々と食べている。 「知也、9月に入ったすぐに実力テストだね」  知也はおびえている。だが、ここは抑えないと。 「そ、そうだね」 「いい高校に就職するためにも、頑張ってよ」 「わかってるよ」  知也は強い口調になった。麻里子は思った。もうこれ以上言わないようにしよう。これ以上言うと、何をされるかわからない。 「先生も、応援してるよ」  知也は朝食を食べ終え、歯を磨くと、すぐに2階に向かった。とにかく勉強するしか方法がない。 「さて、今日も始めるか」 「頑張ろうね」  その声に反応して、振り向いた。そこには奈美恵がいる。自分は1人で勉強をしているんじゃない。奈美恵先生がいる。 「うん。夏休みの宿題を終えたし、あとは受験勉強だ受験勉強だ」  奈美恵は真剣な表情だ。その表情を見ると、自分も頑張らないとと思ってしまう。どうしてだろう。知也は今日も勉強を始めた。 「そうね。専願の高校に行けるように、頑張ろうね」 「ああ」  しかし10分も経たないうちに、筆が止まてしまった。共進学園に受かるために頑張らなければならないのに、なかなか進まない。止まってしまうと、共進学園に合格できるかどうかわからなくなる。ひょっとしたら、合格できないんじゃないかと思ってしまう。 「うーん、わからないなー」 「ここ? ここはこうするのよ」  奈美恵はすぐに教えた。だが、それでも知也はわからない。知也は頭を抱えてしまった。わからないようでは、共進学園に合格できないだろう。とても不安になる。 「うーん・・・」  と、そこに奈美恵がやって来た。奈美恵は知っているようだ。知也はすごいなと思った。 「わからない? こうやって、こうするのよ」 「あー、わかったわかった」  知也はほっとした。ようやくわかった。これでまた合格に近づいたようだ。 「よかったね。頑張ろうね」 「うん」  知也は次第にペースを上げていった。この夏休みで明らかに成長できた。夏休み明けの実力テストでどれだけとる事ができるだろう。わからないけど、頑張ってみせる。  知也は時計を見た。50分連続で勉強をしている。そろそろ休憩をしよう。 「さて、休憩しよう」  知也は腕を伸ばした。ここは少し小休止して、また頑張ろう。  と、奈美恵は周りにあるサッカー選手のポスターが気になった。この子はサッカーが好きなのか? 今年の夏までサッカー部だったのかな? 「知也くん、これ、何?」 「サッカー部の写真。僕、サッカー部だったんだ」  やっぱり知也はサッカー部だったんだ。実力はどんなものだろうか? プロサッカー選手になりたいと思っているんだろうか? 「そっか。高校でもサッカーをやる気?」 「うん。もちろん! 大好きだから!」  知也は高校でもサッカー部に入りたいと思っている。そして、全国大会に出場したいと思っている。いつかは国立競技場のピッチに立てるように、頑張らないと。 「そこでも楽しくサッカーができるといいね」 「そうだね」  知也は笑みを浮かべた。大好きなサッカーの事を話していると、なぜか笑顔になる。それほどサッカーが好きなんだ。  奈美恵も、知也はサッカーが好きなんだと思った。サッカーはとても人気があるし、日本も1990年代中ごろからJリーグの開幕やサッカー日本代表のワールドカップへの出場で人気になってきた。 「そのためには、勉強をしないと。来月早々、実力テストなんだ」 「そうなんだ。頑張らないとね」  奈美恵は驚いた。夏休み明けに実力テストがあるのか。受験のためには頑張らなければならないな。 「私たちの頑張り、見せつけちゃえ!」 「そうだね」  知也は思っていた。夏休みはほぼ、奈美恵と頑張ってきた。今日まで頑張ってきたことを、夏休み明けの実力テストで見せつけてやる。みんなとは違う、何倍も頑張った夏休みの成果を見せつけてやる! 「奈美恵先生と出会って、僕は変わったんだって、知らしめるんだ!」 「そのためには、今以上に頑張らないとね」 「そうだね!」  と、奈美恵は時計を見た。まだ10時にはなっていないようだ。 「じゃあ、もう休憩終わって、始めよっか」 「まだ早いよ!」  知也は驚いた。まだちょっとしか経っていない。まだ勉強を再開する10時になっていないだろう。 「冗談冗談。10時になったらまた始めようね」 「うん!」  奈美恵は少し舌を出した。奈美恵にはこんなおちゃめな面もあるんだな。ますます奈美恵の事が好きになってきた。
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