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見知らぬ同級生
それは、年の瀬も迫ったある冬の日のこと……。
進学のために上京し、大学卒業後も都会で就職していた俺は、中学の同級会が開かれるということで久しぶりに田舎へ帰ることとなった。
まあ、時期的にも年末年始の休みに合わせて帰省するようなものなのだが、ここ数年はなんだかんだあってずっと帰っていなかったので、ほんとこれが久々の帰省である。
「──ハァ……まだ少ししんどいけど、なんとか帰れそうだな……」
その直前、ついてないことにも大流行していたインフルエンザにかかり、一週間ほど高熱でぶっ倒れるというアクシデントに見舞われたものの、ギリギリで回復して今年こそはどうにか帰れそうだ。
新幹線に乗り、途中で在来線に乗り換えてまた数時間……一面に広がる刈り取り後の田園風景の中、ぽつんと存在する裏淋しい簡素なホームへ降り立つと、目の前にはあの日と変わらない景色が広がっている。
「ほんと、昔のまんまだな……」
駅前の個人商店のような小さなスーパー……昭和の面影を色濃く残すうらぶれた木造建築の家々……無人の改札を出て田舎道を歩いて行けば、すでに思い出の中のものとなっていた故郷の景色がそのままそこには実在している。
十年近い歳月が流れているのだ。さすがにいろいろ変化があるものと覚悟していたが、この場所はまるで時が止まったかのようである。
「やっと帰ってきたか。まったく。ぜんぜん顔を見せんで」
「おかえりなさい。ちょっと痩せたんじゃないの? ちゃんとご飯食べてる?」
同じく昔のまんまの古びた木造家屋にたどり着くと、さすがに歳はとってはいるものの、出迎えてくれた両親も何ら変わってはいない。
といっても、直接顔を見るのは何年ぶりかだが、電話ではちょくちょく話をしているので、そんなこともそう感じさせるのに多少なりと影響しているのかもしれない。
また、家にあがれば家具の配置も、久々に嗅ぐ実家の臭いもまさに昔のまんまだ……変わっているものといえば、テレビと冷蔵庫が新しくなってるくらいのものだろうか?
これでは距離的な帰省だけでなく、時間軸的にもあの頃に戻って来たような……ほんとにタイムスリップでもしてしまったかのような錯覚にすら囚われる。
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