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ふと気づくと、私は喫茶店にひとりで座っていた。
目の前には二つのグラス。そのそばに落ちている水滴を、私はなぜかグラスについた結露の雫ではなく涙のあとだと思った。
時計を見るともう夕飯の時間が近い。
帰りが遅くなると両親が心配してしまう、と私は慌てて立ち上がった。
「お会計はお連れ様が済まされましたよ」
連れなどいなかったのに、そんなことを言われて首を傾げる。
沈みかけた夕日の光がなにかに当たり、反射した。
薄い、なにかの欠片。
「綺麗……。なんだろう、これ」
虹色に輝くそれをハンカチに包んで、私は家への道を急いで帰った。
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