龍の養い子

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    *  ふと気づくと、私は喫茶店にひとりで座っていた。  目の前には二つのグラス。そのそばに落ちている水滴を、私はなぜかグラスについた結露の雫ではなく涙のあとだと思った。  時計を見るともう夕飯の時間が近い。  帰りが遅くなると両親が心配してしまう、と私は慌てて立ち上がった。 「お会計はお連れ様が済まされましたよ」  連れなどいなかったのに、そんなことを言われて首を傾げる。  沈みかけた夕日の光がなにかに当たり、反射した。  薄い、なにかの欠片。 「綺麗……。なんだろう、これ」  虹色に輝くそれをハンカチに包んで、私は家への道を急いで帰った。
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