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日曜日の朝、私と博貴はいつも通り、トーストを食べていた。結婚する前、朝食はごはん派だったが、博貴がパン派なので合わせるようになった。
テーブルの上には、私が取り寄せた、限定のピーナッツバターがある。彼はそのピーナッツバターを惜しげもなくトーストに塗っている。
私の頭には、昨日の夜の出来事が浮かんでいた。私が活動しているネット上の読書サークル、そこで最も仲が良いメムリンさんに、今の私の悩みを相談したのだ。すると彼女は、『旦那さんとラブラブになれるように一緒に頑張ろう』と応援してくれた。それはもちろん嬉しかったのだが、その後に続く言葉にドキリとした。
『買い物でも誘ってみたら?』
その言葉に、顔が一気に熱くなる。普通の夫婦なら、普通のことだろう。しかし、私たちは、恋人関係もすっ飛ばして、こうやって仮面夫婦をしているのだ。一緒に買い物なんて、まさにデート、想像するだけで心臓がはじけ飛びそうだ。
博貴の顔色をうかがうと、無表情でトーストをかじっている。
「ねえ」
私がそう声をかけると、博貴は「ん?」とトーストをかじったまま言う。
「今日、もし時間あれば、洋服を一緒に買いに行かない?」
「げほっ、ごほっ」
博貴が急にむせ始める。
「ちょっと、大丈夫?」
私は慌てて彼に駆け寄る。
「ああ、うん。大丈夫だ。それより、今なんて言った?」
「えっ、一緒に洋服を買いに行かないって」
その瞬間、彼の表情が固まる。
「いや、忙しいなら別にいいんだよ」
「あ、いや、特に用事もないから、大丈夫だけど」
「そう、なの」
「何時から行くんだ?」
彼が、何だか尋問するみたいな口調で言ってくる。
「えっと、ショッピングセンターが10時に開店だから、9時30分くらいに家を出られたらいいかな」
「ああ、分かった。準備してくるよ」
そう言って、彼は自分の部屋へと戻る。リビングには、私一人きりとなった。
買い物に、誘うことはできた。しかし、全く嬉しくなさそうな彼の様子を見て、私の心はすっかり沈んでいた。
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