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苦手なタクシーに押し込んでくれた先輩のおかげで、私はあの日を昇華して、殻で隠した本当の私と出会うことができた。
まるで、幼稚園とか、そういう無邪気で懐かしいあの頃のように、素直な私に。
だけど、あの時のことを、先輩は覚えていない。
だからだろう。私が「私の番ですね」とタクシー代を支払うと、不思議そうな顔をした。
「ねぇ、やっぱりわかんない。いつから?」
ビクビクのタネが、先輩の顔を不思議の色に染める。
「皆川ー、教えてやって」
「ふはは!」
「え、えっと……先輩が私の殻を、壊してくれた時からです」
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